作物に必要な元素は16 種類とされています。最も多く必要とされる炭素、水素、酸素は、空気中の炭酸ガスと、根から吸収する水分によってまかなわれます。そのほかの13種類は、土の成分で、窒素、リン酸、カリウムの、「三要素」とも呼ばれ、それを大量に必要とし、互いに協力し合って、効果的に働きます。
窒素(N)
「葉肥え」とも言われ、各種アミノ酸を作り、たんぱく質を合成する。不足すると葉の色は淡く(脱色ぎみ)なり、生育が悪くなります。与えすぎると、葉は緑濃く大きく育つが厚みがなく、病虫害、干ばつ害、冷害を受けやすく、果菜類や根菜類ではツルボケになったり、奇形が多くなったりし、品質が低下する。
リン酸(P)
「実肥え」とも言われ、核酸、リン脂質(細胞膜)の構成成分。初期生育に多量に吸収して花を増やし実のつきを良くし、根を伸ばす働きがある。エネルギー代謝、糖の運搬等にも役立つ。根圏にあるリン酸のみが有効となる。与えすぎると、亜鉛、鉄、マグネシウム等の、欠乏症が起こり易くなります。
カリウム(K)
「根肥え」とも言われ、根や茎を強くし、耐病性を高める。タンパク質、デンプン合成を促進し糖の移動蓄積に役立つ。窒素の効きすぎを抑えたり、実や茎を硬くしたり、イモ類などは品質が向上する。与えすぎると、マグネシウム、カルシウムの吸収を阻害する逆効果になる事もあります。次に中程度必要とされるのが、カルシウム、マグネシウム、硫黄である。
カルシウム
根の先端の発育には、欠かせない。ペクチン酸カルシウムとして細胞壁を強くし耐病性を強化する。与えすぎるとマグネシウム、カリウム、リン酸の吸収を阻害する要因となる。
マグネシウム
葉緑素の主要な構成元素で各種酵素の活性化を助ける働きをする。生育中期から後期にかけて消耗が激しくなる。カリウム、カルシウム、マグネシウム、のバランスが崩れると欠乏しやすくなり、欠乏すると下位葉から欠乏症状が現れる。
硫 黄
タンパク質の構成元素であり、欠かす事はできないが、日本では、欠乏土は、ほとんどない。
そして、鉄、マンガン、亜鉛、銅、ホウ素、モリブデン、塩素が微量要素である。
鉄
葉緑素の生成、光合成を助ける、ビタミンCの合成、呼吸作用、窒素の同化に関与するなど多くの酵素に不可欠である。土壌中のマンガンの量は、微生物の活性度によっても増減する。
マンガン
葉緑素の生成、光合成を助ける、ビタミンCの合成、呼吸作用、窒素の同化に関与するなど多くの酵素に不可欠である。土壌中のマンガンの量は、微生物の活性度によっても増減する。与えすぎると鉄の過剰吸収を起こし植物体内でのリン酸の移動を悪くする。
亜 鉛
葉緑素、植物ホルモンの生成に関与する。与えすぎると鉄欠乏症を起こす。
銅
チトクローム、チロシナーゼ、ラッカーゼ、アスコルビン酸酸化酵素などを形成する。与えすぎると鉄、マンガンの吸収移行を阻害する。
モリブデン
窒素の消化吸収(アミノ酸、ビタミンCの合成)を助ける。
ホウ素
花や芽の分化、花粉の発芽と果実の細胞分裂を促進する。糖の転流を高めて成長点の成長を維持する。カルシウムの吸収を高めて細胞壁を強化する。マメ科作物等、特に花数の多い果樹などの高等植物に必要量の多い要素です。土壌内では、無機態として存在するため土壌から流亡しやすく、特に露地栽培では欠乏しやすい要素です。
塩 素
硫黄と同じく日本では、欠乏土は、ほとんどない。
この様に、作物は人間と同じく、敏感で、デリケートな植物なのです。しかしながら、言葉は話せません。ですから栽培者は、作物の言いたい事を感知してあげなくてはならないのです。
一般に、日本では施肥量は多いと言われております。
過剰施肥してしまったら、作物の生育バランスを崩し、耐病性に弱くなったり、奇形の製品が多くなったり、良い事は何もありません。人間でも腹八分といわれていますが、作物も同じで、一度施した物は取り除けません。作物の状況を見ながらの追肥でも補えますから、観察力を高める事をお薦め致します。